診療内容・特色
当院は昭和27年(1952年)にマリア病院として開設以来、消化器疾患に対する外科治療、特に胃切除の中核的病院として県下の多数の患者さんに信頼されてきました。その後、時代の変遷とともに、取り扱う疾患の幅を拡げ、様々な高度な外科治療にも対応して現在に至っています。特に胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、胆道癌といった悪性疾患の外科治療に取組んでいます。また、胆石症や鼠径ヘルニアといった良性疾患の手術を多数行っています。さらに、急性胆嚢炎、急性虫垂炎、イレウス、腹膜炎など腹部救急疾患に対しても、24時間体制で対応し、緊急手術を数多く行っています。
取り扱う主な疾患
胃がん
- 頻度
毎年約13万人に発症し、2:1と男性に多く、40歳代から徐々に増えはじめて60歳代でピークとなります。胃がんは女性のがんの部位別死亡原因では大腸がん、肺がんに次いで第3位で、男性では肺がんに次いで第2位です。 - 症状
胃がんに特有な症状はなく、早期胃がんの多くは無症状で、一般には上腹部痛や腹部膨満、食欲不振などを契機に、胃透視検査や胃内視鏡検査で偶然に発見されます。進行がんになると、体重減少やつかえ感、消化管出血(吐血や下血)などにより発見されます。 - 検査および診断
バリウムによる胃透視検査と胃内視鏡検査などがあります。胃内視鏡検査の場合生検(組織を採取し顕微鏡検査にて良性、悪性を判別する)によって胃がんかどうかの確定診断が可能です。CEA、CA19-9などの腫瘍マーカーといわれる血液検査がありますが、すべての胃がんに陽性となるわけではなく、あくまで補助的検査となります。 - 手術
従来の開腹手術以外にも、早期胃がんに対しては腹腔鏡手術を積極的に取り入れています。腹腔鏡手術はおなかに開けた小さな創からカメラと専用の器具を入れて行う手術で、小さな傷で手術が受けられるため、手術後の傷が目立たない、術後の痛みが少ない、入院期間が短いなどのメリットがあります。
また、近年欧米を中心に開発された手術における安全性の向上、術後合併症の軽減、早期回復などを目的とした手術期包括プログラムであるERAS(enhanced recovery after surgery)プロトコルも取り入れ、麻酔科や内科、リハビリ科など多職種合同で周術期管理を行い、周術期の安全性の向上に努めています。
早期胃がんに対しては大半を腹腔鏡手術で行っています。 - 化学療法
当院では外来化学療法室を併設しており、患者さんの体力や抗癌剤のメニューによっては、外来での通院化学療法が可能となっています。専任の看護師、薬剤師を配置し十分な体制で外来治療を積極的に行っています。栄養サポートチーム(NST)、抗がん剤使用時に障害の起きやすい口腔のケアと担当する歯科チームなどのメディカルスタッフとも連携をとりながら治療を進めています。
胃がんに対する化学療法は胃癌治療ガイドラインに準拠し行っていますが、それぞれの患者さんの年齢、体力、社会的立場などを考慮した個別化治療を目標に患者さん、ご家族とともにスタッフが全力をあげて胃がん治療に当たります。
肝臓がん
肝細胞癌の多くは肝硬変などを背景に発生するため、肝細胞癌の症例はしばしば肝予備能低下を伴います。また肝細胞癌は同時性または異時性に多発しやすいことが知られています。これらの特徴を踏まえて、各症例の腫瘍因子と肝予備能を評価した上で治療方針を選択することが重要です。
肝細胞癌の治療法として以下のものが挙げられます。
- 肝切除術
- ラジオ波焼灼療法(RFA;radiofrequency ablation)経皮的または腹腔鏡下に行います。
- 肝動脈化学塞栓療法(TACE)
- 肝動注化学療法(HAIC)
- 分子標的薬 (ソラフェニブ Sorafenib (ネクサバール))
- 肝移植
- 放射線療法:外部照射(門脈腫瘍栓などに対する)、粒子線療法(限られた施設で実施)
肝細胞癌の腫瘍側因子(大きさ、個数、形態、存在部位、Stage、脈管侵襲の有無)と宿主側因子(肝予備能)を総合的に評価したうえで最適の治療法を選択します。治療法の選択に際して、肝細胞癌治療のアルゴリズム(科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン)が参考になります。
1:肝切除
がんを含めて肝臓の一部を切り取る方法です。肝機能良好である場合、最も良好な長期予後が得られます。多くの患者さんは手術後10日前後に退院されています。しかし、開腹による肝切除術は大きく腹壁を切開するため、身体への負担が大きく、また、手術後に傷の痛みが強い、術後癒着のため再手術の時に難しくなる、など欠点があります。この欠点を克服する手術が腹腔鏡下肝切除です。メリットとしては「傷が小さい」「術後の痛みが少ない」「術後の回復が早い」という点が挙げられます。一方でデメリットとしては、開腹に比べると手術時間がかかることがあります。
2:経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)
超音波で腫瘍を描出し、局所麻酔を行ったうえで経皮的にラジオ波針を腫瘍に穿刺し、通電して熱凝固します。原則として腫瘍径3cm以下、個数3個以内、肝予備能Child-Pugh分類AまたはB、出血傾向や腹水がない場合が適応となりますが、個々の症例の条件によって適応を拡大する場合もあります。発生部位によっては人工胸水・人工腹水など作成して、より安全確実に治療できるようにします。
3:肝動脈化学塞栓療法(TACE)
局所麻酔下に大腿動脈を穿刺して腹部大動脈から腹腔動脈、上腸間膜動脈、肝動脈などへカテーテルを挿入し、血管造影を行います。CTを併用することもあります(Angio CT)。肝細胞癌への栄養血管を確認し、マイクロカテーテルを選択的に挿入し、リピオドール(油性造影剤)加抗腫瘍剤、続いてゼラチンスポンジ細片を栄養血管に注入して塞栓を行います。肝細胞癌が多血性で、サイズが大きい場合や多発病変の場合が主な適応になります。繰り返して施行することが可能です。
4:肝動注化学療法
肝動脈カテーテルから抗腫瘍薬を注入する治療法です。カテーテル近位部につないだ穿刺器具(リザーバーまたはポートと呼びます)を皮下に留置して、薬剤を反復的・持続的に注入することもあります。肝予備能Child-Pugh分類AまたはBで、TACE不応例や、門脈腫瘍栓合併などでTACE不適応例などが適応となります。
5:分子標的治療薬
内服薬ネクサバールによる治療法です。Child-Pugh分類Aで進行例、TACE不応例などが適応となります。
膵がん
膵がんの早期発見例は極めて少なく、黄疸や腹痛などの自覚症状がでてから膵がんが見つかった場合、多くはステージⅢかⅣ段階の進行癌です。膵がんの根治療法は外科手術のみですが、発見されたときには隣接する膵外の血管や血管周囲の神経叢に広く浸潤していたり、肝転移や腹膜播種転移を起こしていることが多く根治切除可能な症例は2~3割です。切除できても2年以内に7割が再発し5年生存率は10%台でした。10年前よりゲムシタビンいう抗がん剤を術後に注射することにより、5年生存率が20%台に向上してきました。また、国産の抗がん剤TS-1を術後内服させる臨床比較試験が日本で行われ、ゲムシタビンを上まわる生存率がでましたので、現在では、膵がん切除後の補助化学療法はTS-1が第一選択となっています。ただ、根治切除するために動脈周囲の神経叢まで切除しなければならず、それが原因で術後に頻回の下痢をもたらして栄養状態が改善せず、また抗がん剤の副作用もあり十分にTS-1を継続することができない患者さんが多いのも事実です。数年前から、高度に進行した膵がん(borderline resectable case)には術前に化学療法をおこなって縮小または進行しないものだけを切除するという試みも始まっています。すぐに再発して予後の悪いケースを手術から除外することができます。膵臓がんの治療は、消化器外科医の中でも特に胆膵外科の専門医が手術や化学療法を行った方がよい領域です。当院では専門的な治療を行っていますので、近医で膵がんが疑われた方はどうぞお気軽にご相談にお越しください。切除できない膵癌の方にも、最新の抗がん剤治療を行い、また疼痛を緩和し快適な生活が長くできるようにサポートできる体制を整えています。
胆管がん、胆のうがん、十二指腸がん、十二指腸乳頭部がん
膵がんほど悪性ではなく手術で治りきるケースが多くあります。
しかし手術は膵頭十二指腸切除、胆道再建を伴う肝切除など多様で難易度の高い術式を含んでいます。
肝胆膵外科の専門医が確実な根治手術を行う領域ですので是非ご相談にお越しください。
医師紹介
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かなや よしあき
金谷 欣明
役職 - 外科部長
- 救急科部長
- 卒後臨床研修センター長
専門分野 - 消化器外科
- 内視鏡外科
- 一般外科
- 救急医療
資格 - 医学博士、岡山大学臨床准教授
- 日本臨床外科学会評議員
- 日本腹部救急医学会評議員
- 日本外科学会外科指導医・専門医
- 日本消化器外科学会消化器外科指導医・専門医・認定医
- 日本消化器外科消化器がん外科治療認定医
- 日本がん治療認定医機構認定医
- 日本腹部救急教育医・認定医
- 日本救急医学会認定ICLSインストラクター
メッセージ 消化管、特に胃がん・大腸がんを専門領域とし、これらに対する低侵襲な腹腔鏡下手術は20年ほど前より積極的に取り組んでおり、多くの知識と経験の蓄積があります。この領域の化学療法(抗がん剤治療)の進歩は目覚ましく、看護師、薬剤師など他職種と連携して、最適な方法を患者さんの年齢、体力に応じて個別化して提供できるよう努めています。
一方で、救急部門の責任者として、地域の皆様に信頼される姫路聖マリア病院であるよう、救急医療、災害医療の質と患者さんの満足度向上に取り組んでいます。 -
じだ まさる
治田 賢
役職 - 大腸・肛門外科部長
専門分野 - 消化器外科(とくに大腸・肛門病等の下部消化管外科)
- 内視鏡外科
- 一般外科
資格 - 医学博士(岡山大学)
- 日本外科学会外科専門医
- 日本消化器外科学会指導医・消化器外科専門医・消化器がん外科治療認定医
- 日本大腸肛門病学会認定大腸肛門病専門医
- 日本消化器病学会消化器病専門医
- 臨床肛門病認定医
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- ストーマ認定士
- 麻酔科標榜医
メッセージ 2002年に岡山大学医学部を卒業後、消化器外科医として研鑽を積み、2015年4月に姫路聖マリア病院へ赴任いたしました。消化器外科専門医、大腸・肛門病専門医として、主に胃がんや大腸がん(結腸・直腸がん)の診療に従事しています。また、2017年6月より直腸肛門外来を開設し、痔疾患(痔核、痔ろう、裂肛など)や直腸脱、排便困難の診療にも携わっています。肛門疾患手術は専門病院からのご紹介もあり年々増加しており、痔核、痔ろう、裂肛、直腸脱の手術のみで年間100例程度施行し、そのすべてを執刀、担当しています。故郷でもある姫路の地域医療への貢献と当院の医療水準向上を目指し日々精進してまいりますので、大腸・肛門病のみならず、消化器疾患に関してお困りのことがございましたら何なりとご相談ください。
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よしだ かずひろ
吉田 一博
役職 - 肝胆膵外科部長
専門分野 - 消化器外科
- 一般外科
資格 - 医学博士(岡山大学)
- 日本外科学会専門医
- 日本消化器外科学会専門医指導医
- 消化器がん外科治療認定医
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- 日本バイオインフォマティクス学会バイオインフォマティクス技術者
メッセージ 2022年4月より勤務させていただいております。前任地の岡山大学病院では、主に肝胆膵領域・肝移植の診療に従事していました。2022年度を通して、姫路北部から神崎郡にお住まいの患者さんに対して、幅広く一般外科、消化管、肝胆膵外科の診療をさせていただき、当院の重要性と責務を学ばせていただきました。今後も、患者さんの診断から治療に至るまで総合的な診療を通して、姫路の地域医療へ少しでも貢献できるよう日々精進いたします。
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いまにし けんたろう
今西 謙太郎
専門分野 - 消化器外科
- 一般外科
資格 - 日本外科学会外科専門医
メッセージ 岡山大学を卒業後、当院や岡山大学、大学の関連病院で勤務し、このたび約2年ぶりとなる2025年1月より当院で勤務させていただくことになりました。これまで外科領域で幅広く研鑽を積み、当院では消化器外科・一般外科を中心に担当させていただきます。丁寧な診療と分かりやすい説明を心掛けてまいりますので、皆様よろしくお願いいたします。
外来担当医表
◎:初診担当 (非):非常勤医師
月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
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治田 胃・大腸・肛門 |
金谷 胃・大腸 |
治田 胃・大腸・肛門 |
吉田 消化器 |
金谷 胃・大腸 |
吉田 消化器 |
今西 消化器 |
休診・代診情報
休診代診情報はありません。