その1に続き、皮膚腫瘍学会のお話しを・・・。
今回は内容編です。
エクラープラスターが使えそう
当院では、副腎皮質ステロイド含有のテープ剤としてドレニゾロンテープが採用されていました。緩和ケア病棟では、このドレニゾロンテープを、持続皮下注射穿刺部発赤対策に使用してきました。しかし、数年前よりドレニゾロンは採用中止となっており、我々は持続皮下注射穿刺部発赤対策に苦慮してきました。さて、第39回皮膚悪性腫瘍学会では、ドレニゾロンより副腎皮質ステロイド力価が高い(およそ5倍)テープ剤として、エクラープラスターが紹介されていました。おそらく、ドレニゾロンテープより強力に持続皮下注射刺入部の発赤を抑制できるものと考えます。また、薬価もそれほど高くないことから、使いやすそうです。看護師さんから要望があったら、採用依頼しようかな~。
免疫チェックポイント阻害薬新時代が来そう
2014年に根治切除不能な悪性黒色腫」の治療薬として、ニボルマブが認可されてから、もう10年が経とうしています。ここ数年ニボルマブのみならず、おおくの免疫チェックポイント阻害薬が臨床実装され、がん治療は大きく発展しました。しかし、がん治療を、緩和医療科医として、「そば」から眺めていると、徐々に疑問を感じるようになってきました。「これって、乱暴な治療じゃない。」と・・。
免疫チェックポイント阻害薬の「みそ」は、腫瘍内で、腫瘍細胞に対する免疫応答を抑制している制御性T細胞(Treg)の活性をおさえて、腫瘍細胞に対する免疫応答を復活させることにあります。しかし、現在の免疫チェックポイント阻害薬は、腫瘍細胞に対する免疫応答をつかさどる細胞障害性T細胞(CTL)の活性も押さえてしまう可能性があります。このせいで、免疫チェックポイント阻害薬を投与すると、がんが急速に進行する患者さんが少なからずおられます。また、自己免疫を制御している(ちゃんとした仕事をしている)Tregまで抑制してしまい、自己免疫疾患を悪化させたり、免疫関連有害事象(irAE)を発生させてしまったりします。しかも、このirAEが発生した方が、免疫チェックポイント阻害薬が良く効くとまで言われる始末・・。野蛮ですよね。また、T細胞系の悪性腫瘍(菌状息肉症や成人T細胞性白血病リンパ腫など)は、免疫チェックポイント阻害薬を投与すると、確実に悪化します。さらに、免疫チェックポイント阻害薬投与によって、T細胞系の悪性腫瘍を新たに発症する患者さんも増えつつあるそうです。こうなってくると、免疫チェックポイント阻害薬を使ったがん治療って、「諸刃の刃を目隠しして振り回している」ようなものって感じに思えてきます。
が、しかし、この分野は、いま急速に発展しているようです。
なんと、腫瘍内で腫瘍細胞に対する免疫応答を抑制している制御性T細胞(Treg)の活性だけ落とす方法が見つかりつつあるんです。それは、抗CCR8抗体! いまはまだ治験の段階だそうですが、この薬剤が良好に開発され、臨床実装されたら、がん治療は大きく飛躍するかもしれません。期待したいですね。
T細胞系の悪性腫瘍も、やはりヘテロジーニアス
多くの腫瘍は、単一の細胞のクローンではなく、ちょっとずつ遺伝子変異が違う雑多な細胞の寄せ集めであると言われれています。言葉を変えると、ホモジーニアスではなく、経ていないであると言えます。T細胞系の悪性腫瘍も、やはりヘテロジーニアスであり、菌状息肉症の特徴である、「この部位は紅斑(T1)なのに、ここは肥厚性病変(T2)になってきた。そうこうしていると、T2病変の中から腫瘍病変(T3)がでてきた。さらに、何もなかった部位からT3がでてきた。。。」の説明もつきやすいとのこと。
マニアックな学会だけあって、めちゃマニアックな知識をUp dateすることができました。行ってよかった~。・・・・暑かったけど・・・ほんと・・・。

外来担当医表